初めてコモド国立公園の名前を聞いたのは、旅仲間から渡された一枚の写真だった。三つの湾が交わるパダル島の丘からの眺め——白砂、黒砂、そうしてうっすらとピンクに色づいた砂浜が、青い海を背景にそれぞれの個性を主張していた。「本当にこんな場所が存在するのか」と思いながら、数ヶ月後、私はラブアンバジョの港に立っていた。
実際に訪れてみると、写真は現実のほんの一部しか切り取っていなかった。
コモドとは、どんな場所なのか
コモド国立公園はインドネシア東部、バリ島から飛行機でわずか1時間15分のところに浮かぶ群島だ。1991年にユネスコ世界自然遺産に登録され、コモドドラゴンという世界最大のトカゲの生息地として知られているが、実態はそれだけにとどまらない。陸地には固有の生態系が広がり、海中には珊瑚礁と豊かな海洋生物が息づいている。
公園の面積は1,817平方キロメートル。主な島はコモド島、リンチャ島、パダル島の三つで、それぞれに異なる表情を持つ。
旅のスタイルは基本的にライブアボード——伝統的な木造帆船「ピニシ」に乗り込み、数日かけて島々を巡るものだ。一か所に腰を据えるホテル旅行とは異なり、毎朝違う湾で目が覚める。その感覚は、一度経験すると忘れられない。
行き方——バリ島経由が王道
日本からの直行便はない。東京・大阪・名古屋からバリ島のデンパサール空港(DPS)まで飛び、そこでラブアンバジョ空港(LBJ)行きの国内線に乗り継ぐ。
- 日本→バリ島: ガルーダ・インドネシア航空、JAL共同運航便など。飛行時間約7〜8時間
- バリ島→ラブアンバジョ: ライオンエアやガルーダ国内線。飛行時間1時間15分、片道1万5千〜3万円程度
乗り継ぎは同日でも可能だが、バリ島で一泊してから翌朝の便を取るほうが体への負担は少ない。デンパサール空港は思いのほか混雑していて、国際線から国内線ターミナルへの移動に時間がかかることがある。
いつ行くべきか
乾季(4月〜12月)が一般的におすすめだ。海が穏やかで、視界も良好、コモドドラゴンも活発に動き回っている。特に5月〜6月と9月〜10月は混雑が少なく、天候も安定しているため、旅慣れた人ほどこの時期を選ぶ傾向がある。
マンタエイとの遭遇を最優先に考えるなら、話は別だ。9月〜3月はプランクトンが豊富な時期で、マンタポイントへの集まりが増える。雨季と重なる時期だが、「雨季だから楽しめない」ということはない。午後に短時間のスコールが来て、その後はまた晴れ上がる、というのがコモドの典型的な雨季の一日だ。
3泊4日で回れる主なスポット
旅程の詳細は乗るピニシによって異なるが、4日間あればおおむね以下の場所を訪れることができる。
パダル島: あの三湾の絶景。丘への登山は往復1時間弱。朝日の時間帯に登るためだけに、前夜から近くに停泊しておく価値がある。
ピンクビーチ: 珊瑚の欠片が砂に混じり、ほのかに薔薇色に見える砂浜。目の前の浅瀬に飛び込めばすぐにサンゴ礁が広がっている。
マンタポイント: ここではマンタエイが「クリーニングステーション」に繰り返し戻ってくるため、水面からのシュノーケリングでも高い確率で会える。
リンチャ島またはコモド島: コモドドラゴンのトレッキング。地元のレンジャーに同行してもらい、野生の個体と向き合う。
タカ・マカッサル: 白砂のバー(砂洲)が海面から顔を出す、この公園で最もシュールな光景のひとつ。
持ち物と注意点
日差しは予想以上に強い。アームカバー、日焼け止め(サンゴへの影響を考えて珊瑚礁対応のもの)、帽子は必須だ。船の揺れに弱い人は酔い止め薬を必ず持参してほしい。公園内は電波がほぼないため、オフライン地図や事前ダウンロードしたコンテンツがあると過ごしやすい。
現地通貨のインドネシアルピア(IDR)は、ラブアンバジョの市内ATMで引き出せる。カードも一部使えるが、現金を持っておくほうが安心だ。
実際に行ってみた感想
最終日の午後、タカ・マカッサルで泳いでいると、船の上から声がかかった。「ツルーが来てますよ」。振り返ると、緑のウミガメが私の横を音もなく通り過ぎていくところだった。
旅行中、この種の「こちらが何もしていないのに向こうからやってくる」場面が何度かあった。コモドの自然は押しつけがましくない。あくまで向こうが生活していて、こちらが少し邪魔しに行っている。その感覚が、帰国してからもしばらく頭に残った。
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