桟橋に着いた瞬間、「本当にこれに乗るの?」と思った。
インドネシアの伝統帆船「ピニシ」は、観光パンフレットの写真よりも実物の方がずっとリアルで、ずっと美しかった。鉄製のクリートや近代的なレーダーを装備しながら、船体はすべて手刻みの木造。マストが二本、甲板の上に日よけのテントが張ってあり、船員たちが出発前の準備に動いている。ホテルのチェックインとは全然違う種類の高揚感があった。
ピニシとは何か
ピニシはインドネシア南スラウェシ島のコンジョ族とブギス族が建造してきた木造帆船で、かつては香辛料、木材、魚を運ぶ交易船として使われていた。2017年にはUNESCOの無形文化遺産に登録された——帆船を建造する技術そのものが、設計図なしに親から子へと受け継がれてきた無形の知識として認められたのだ。
今はその多くが観光用ライブアボードに改装されている。エアコン付きキャビン、小さいながらもシャワー付きのバスルーム、食事をとる屋根付きの甲板スペースが整備され、木のぬくもりと海の匂いを保ちながら快適に過ごせる作りになっている。
船上の一日はどんな感じか
起きると、前夜と違う湾に停まっている。それだけで朝の気分が変わる。
朝食は甲板で。コックが作る料理はインドネシアのホームクッキングが基本で、ナシゴレン(焼きめし)、新鮮な魚の炭火焼き、フルーツの盛り合わせなど。「リゾートホテルの朝食とは違うが、毎日食べても飽きない」という感想が正直なところだ。
午前中は水中活動。ピンクビーチでのシュノーケリング、マンタポイントでのシュノーケリング、という具合に場所を変えながら海に入る。午後は次の島への移動を兼ねて甲板でくつろぐか、上陸して散策する。夕食は日が傾いた後、湾の中に停まったまま甲板で食べる。この夕食の時間が一番好きだった。
夜は電波がない。バッテリーを節約するために発電機を切ることもある(船の設備によって異なる)。その代わり、空が凄まじい。
キャビンは正直どうなのか
「ホテルと比べれば小さい」が答えだが、それが不快かどうかは人による。
中級クラスのピニシのキャビンは、ダブルベッドとサイドテーブル、小さな収納スペースが収まる程度の広さ。バスルームはシャワーとトイレが同じ空間に入っている「ウェットルーム」スタイルが多い。コンセントの数は少なく、全員が同時に充電できないことも。モバイルバッテリーは必需品だ。
ゴールデンウィークにバリ島から参加したこともあるが、5月の夜風を甲板で吸いながら眠りについた感覚は、どんなホテルの快眠とも違うものだった。開け放したハッチから入ってくる海の匂いが、アラームよりも先に目を覚まさせてくれる。
費用はいくらかかるか
中級クラスのオープントリップ(他の旅行者と相乗り)3泊4日で、一人50,000〜100,000円前後が目安。プライベートチャーター(船ごと貸し切り)は150万円〜400万円程度になるが、6〜10人のグループで割れば、一人当たりの費用は大幅に下がる。
OTAを通さずに現地オペレーターに直接申し込むと、15〜25%程度安くなる場合が多い。船の質が変わるわけではないので、時間があるなら問い合わせてみる価値はある。
最後に
帰りの船の甲板で、一緒に旅をした乗客の一人が「3泊4日は短すぎた」と言った。その気持ちは分かる。コモドでは時間が違う流れ方をする。それが、ライブアボードという旅のフォーマットの本質だと思っている。
ピニシの種類と出発日についてはWhatsAppでお気軽にお問い合わせを。 Dara Flores Adventures